2017年11月03日

「楽園の方舟・小拡張」デザイナーズノート(らしきもの)

とりあえず、めっちゃ長くなったので追記の方で公開しておきます。
興味のある方はどうぞご覧くださいませ。





「楽園の方舟・小拡張」デザイナーズノート

0.承前
 この記事は、拙作のボードゲーム「楽園の方舟・小拡張」のデザインを行った際に
 どのような思惑をもって各要素を設定していったのかをまとめた文章である。
 興味がある方に見て頂けるなら幸いである。また、興味を惹かれるようなことがあれば、
 ぜひ「楽園の方舟」といっしょに手に取って頂ければありがたい。楽しいゲームだよ。



1.製作におけるコンセプトの設定
 「楽園の方舟・小拡張」の製作において、以下の要素をコンセプトとして設定した。
 優先度は特に設けていなかったが、後から見返すとだいたい数字の順に意識していたようだ。

  1.リプレイ性の強化
  2.アクション内容のバランス調整
  3.一部不満点の解消



2.各コンセプトの内容解説
 上記の優先度が低かった方から順番にコンセプトの設定に至った経緯等を解説していく。

 A.一部不満点の解消
   楽園の方舟頒布後、手番の決まり方についての不満点についての意見がいくつか見られた。
   これに関してはもっともだと考えたこと、また問題の部分解消として簡易的なバリアントを
   用意するだけで済むことから着手に至った。
   その他の不満点に関しては、以下の理由のいずれかから今回は解消に至らないと判断した。
     1.不満点の具体的な内容が不明、表現が非常に曖昧で再現性に乏しい。
     2.基本コンセプトそのものとプレイヤーの趣味趣向のマッチング不具合。
     3.小拡張の規模では修正しきれないコンポーネントの変更が必要。
       

 B.アクション内容のバランス調整
   アクション内容のバランスは、基本の時点でかなり調整されている。
   「楽園の方舟」におけるバランス、その本質は「プレイヤーの気づき」による自動調整にある。
   特定の戦術が強いのではなく、アドリブによる盤面の動きで勝敗がかなり傾くように調整した
   (つもりだし、おそらくそうなっていると思うがさて…?)のも、プレイヤー同士の絡み合いを
   強く期待したからである。
   もちろん、一本筋の通った得点の道筋がないと中途半端に終わってしまうが、
   その筋すら他プレイヤーとの兼ね合いで変化せざるを得ない、というあたりが多分に私の
   趣味趣向が入っている部分でもある。

   さて、大分脱線したが、小拡張におけるバランスの調整とは、基本で取ったバランスを
   別の観点から取り直したものだと言える。
   つまりアクションスペース数の均一化、得点行動としての植物の弱体化と、
   祭礼品・動物の微強化、そして方舟建造のメリット増強である。
   これにより、インタラクションへの比重が薄れ、どのような道筋を通っても
  (他プレイヤーとの兼ね合いをさほど考えなくとも)それなり以上に勝敗に絡めるようになった。
   少なくとも「楽園の方舟・小拡張」のバランス調整はその点を意識して行われた。

   意図としては、基本においてさすがにプレイヤーの気づきに依存しすぎたため
  、ある程度その部分を緩和したかったというのが大きい。
   特に植物のあたりが顕著だったので、追加の土地カードでは植物アクションをかなり削り、
   かわりに動物を少しと祭礼品を多く取り入れた。
   また、使命カードで植物が更に競合しやすくなったり、方舟で意図的に植物を対象としない
   カードを入れたり、植物ルートへのリスクが増えているのもバランス調整の一環である。
   方舟カードの大量追加も、基本は方舟建造で予定されるメリットの増加が目的であり、
   基本の方舟カードと比べてかなり強いものが多い。
   基本でも強いカードは強いし、弱いカードも条件が揃えば爆発力はあるので、
   この水増しでうまいことメリットが多いように見えれば目的達成という感じである。
   まあ、弱いし使い道も限定されすぎてたカードは改訂が入ったけれど。
   どのカードのことでしょうねえ…?


 C.リプレイ性の強化
   リプレイ性の強化は、このゲームに関して言えば必要不可欠であったと言える。
   なんせ、このゲームはワーカープレイスメントとしては軽ゲーの範疇に入り、
   なおかつ回数をこなすことで習熟・インタラクションの取り方のコツを掴んでいくゲームなのだ。
   複数回遊ぶことを前提としているのだから、複数回遊んでも耐えられる新規性が必要になる。
   基本におけるリプレイ性は土地カードの配置順、方舟カードのランダム性(10から5or7)、
   使命カードのランダム性(7から3or4)であった。
   これだと最悪2回で全要素が明らかになり、あとは組み合わせの渦に身をまかせるのみとなる。
   いかにも頼りなかったが、予算等の問題でこれ以上の戦力投入は致せなかったのであった。
   今回の小拡張で方舟カードは新規に6枚、使命カードは新規に3枚が追加され、
   なおかつ組み合わせの幅も広がった。安心とまではいかないが、一息つけるところだろう。

   話は変わるが、今回の小拡張では基本では採用しなかった複雑な処理を要する方舟カードの
   効果を取り入れている。
   工作室あたりが顕著なところで、あの効果はかなり面倒な例外附記が必要になった。
   あえてそういう効果を入れたのは、方舟カードがこのゲームで一番派手な部分であり、
   そこでコンボのような動きができると快感が得られるだろうと想定したからである。
   せっかくの拡張だし、少しは手間のかかる処理を組み込んでみたかったのというのもある。
   実際なにかと面白い挙動ができそうなので、ぜひとも試してみて欲しい。
   他のカードも(基本のカードもそうだけれど)手順は必要だが上手く使えると楽しい。
   ぜひいろいろ試して頂きたい。


3.各追加カードについての付記
  最後に、今回の小拡張で追加された追加カードについて付記する。
  とはいえすでに述べているような部分もあるので、適当に読み流して頂けるといいかもしれない。

  ・土地カード(4枚)
   アクションのバランス調整用である。以上。
   植物が少なくなり、動物と祭礼品が期待値としては増える。
   実際、アクション数としては植物(そして造船)が多いため、そこにアクセントが加わるのは
   悪いことではないと思う。でもちょっと地味。


  ・方舟カード(8枚)
   
    A.工作室
      リミット6、■1→方舟上から■を移し替える。■2→未使用の■2つを資源1に変換
      問題児。この手の効果はありがちだが、処理が煩雑になり実際に組み入れるのは躊躇する。
      今回は小拡張なので入れてみたが、基本の段階では入らなかった。強いというか面白い効果。
      説明書の追記がかなり長いが勘弁して頂きたい。しょうがないんや……
      ■2効果は建材を捨てるつもりならそこそこ使える。これも一種の保険。

    B.船工房
      リミット6、■1→方舟上の■に応じて発言力。■2→完成した方舟上の■に応じて資源
      基本の「祭祀場」や「動物園」などの亜種。参照が資源ではなく配置した建材キューブなのが
      ミソで、結果的に造船アクションをするほど強くなる。造船強化の一環となる方舟。

    C.合議場
      リミット6、■1→未配置のワーカーに応じ発言力。■2→未配置のワーカーに応じてVP
      縛りがキツいがハマれば強い、ハマらなくても普通に使える、そんなお得な方舟。
      どうしてもワーカー1体は土地カード上に置き去りになりがちなので、上手く使うには
      計画を組む必要がある。ついでに6発言力のフリーアクションと相性がとても良い。

    D.展覧室
      リミット6、■1→祭礼品or動物をVPに変換。■2→発言力1
      基本の「加工室」の亜種、と見せかけて実は使用用途が異なる別物。
      建材1つでVP変換行動が取れるのが結構なアドバンテージになるので、特に祭礼品を
      序盤からブチ込んでいくのが強そう。回数が必要なのでこれも造船強化の一環と言える。

    E.廃棄場
      リミット8、■1・2→置いた■でマスを埋め、そこに書かれたものを得る。
      見た感じ新しいが、やってることは別に新しくもない強い方舟の追加である。
      どのタイミングで入っても有用なものが手に入るので損はない。ただ、できれば自分が
      最大効率で得をしようと思うと難しい部分に多少のインタラクションがある。
      しかしまあ、そこまで深く考えずに置いても十分に強いので長考はしない方がいい。

    F.賭博場
      リミット6、■1・2→置いた■の数だけ数字を宣言、1回サイコロを振り出目でVP。
      超問題児。ラウンドマーカーがサイコロだからやれるな?というだけで入り込んできた。
      これも基本なら絶対入れなかったのだが、小拡張の追加カードは採用・不採用は自由である
      という点を免罪符に入れてみた。ゲームをぶっ壊すほど強いのか?と言われるとノーだが、
      理論的には造船アクションを6回行い、6回起動して全て成功(約16%を連続6回成功)させれ
      ば18点になる、という理論値だけ見ればかなり強い。ほぼほぼ有り得ないので勘弁して。
      一応、これを採用したのにも理屈があって、「逆に全て失敗してもゲームになる」のだ。
      造船アクションを多目に取るだけで、他のマジョリティに絡みづらくなるが、浪漫プレイを
      して全く上手くいかなくても、ゲームが全く破たんしてしまうということにはならない。
      (逆に、実はすべて成功したところで、確実に勝てるという訳でもなかったりする)
      運要素はこの手のゲームにいらない、という人は遠慮なくオミットしていいと思うけれど、
      案外こういう要素もゲームに波を起こして面白いだろう、という思惑というか希望によって
      生まれたカードであった。できれば仲良くしてあげて欲しい……ダメかな?

    G.船首像(改訂)
      リミット8、■1・2→なし。完成時、手元に戻ってきた■1につき1VP
      あんまりにもデメリットが厳しすぎたので純粋強化された方舟。
      これでも小拡張のカードパワーに追いつけていない可能性がある。けどだいぶ強くはなった。

    H.船長室(改訂)
      リミット6、■1→1VP、■2→次ラウンドの自分の手番順を指定できる
      後述する手番順バリアントカードの採用によって改訂された方舟。
      オンリーワンの効果を持っているので、これ自体は基本から強かったと思う。
      もともと発言力によってスタートプレイヤーが変更される利点・欠点は分かっていて、
      このカードの効果と、そもそも手番順の有利不利がそこまであからさまでもない設計の
      点、手番順変更の厳密さより煩雑さの解消を優先したことなどから基本ルールにおける
      手番順の設定に相成った訳だが……
 


  ・使命カード(3枚)
   3点/3点の使命カードは4点/2点の使命カードと比べると特化しなくてもいい分、
   両方ともほどほどに取らなくてはならないのでどちらかといえば経験者向きか。
   (どちらかといえば、植物が他プレイヤーとよりかち合いやすくなるというデザイン上
    の意図が働いている点の方が大きいか。もう1枚は逆に、祭礼品・動物が強化された
    ので取りやすく動きやすいだろうという側面からのデザインである)
   なお、使命なし2点のカードは取ってみると自由に動けるので案外面白い。おススメ。



  ・手番順バリアントカード(4枚)

   発言力が大きいプレイヤーがスタートプレイヤーを取ると、それ以降の手番も固定化してしまう。
   このゲーム、手番順による有利不利というのは(異なる形で現れるためわかりにくいが)あまり
   ない。有利不利において先手番・後手番で別の特徴を持つ、というのが正しいか。
   そのため、別に手番固定化してもゲームとして十分成立するしバランス上の面から見て問題には
   ならないと考えていたが、プレイヤーの心理上、最後手番が連続すると不公平感が出るという点
   について完全に失念していた。
   ユーザーの不満点としてこれがいくつかの場所で挙げられており、確かにバランス上はともかく
   プレイヤーの心理ケアとしてこれを改善することはゲームの質をより高めることに繋がると考え
   たため、手番順についてバリアントルールを新たに設けることになった。
   それがこの手番順バリアントカードである。まあようするに、発言力の多い順に1~4の数字を
   1つずつもらっていき、その数字の順番に次ラウンドの手番を行っていく、というものである。
   発言力トップはかわらなくても、それ以外のプレイヤー間で順位が変わり、結果として手番順に
   変化が生まれるため、プレイヤー心理上での不公平感の解決にはつながると考えられる。
   実際これを用いたテストプレイでは、手番順における不公平感については緩和されたという
   意見が多かったため、対処療法的ではあるが有効であったと言えるだろう。多少煩雑にはなったけど。


3.最後に
 なんだかやたらと長くなってしまったが、とりあえずこれで一旦筆を置かせてもらおうと思う。
 つらつらと書き続けたが、コンセプトに関しては十分書けたしもうこれ以上は書き足さないかな……
 小拡張によってより面白くなっているはずの「楽園の方舟」を、どうぞよろしくお願いします、ということで。
 最後までご覧いただきどうもありがとうございました!


 あ、ゲムマ秋の取り置き予約とかやってるので。よかったらぜひ予約してください。
 よろしくお願いします。

 
ラベル:GM2017秋
posted by ナナツチ at 14:16| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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